東急コミュニティー”◯◯再発見”プロジェクト
〜多様な日本の魅力に触れる〜

丹波の黒豆から「天空の城」竹田城まで
美食と景色を楽しむ、北近畿ドライブ旅

丹波、但馬、丹後、若狭……北近畿とは京都府と兵庫県の北部、
日本海側の地域のことを指します。
丹後は冬のカニの本場として有名ですが、
それ以外にも海の幸・山の幸が盛り沢山。
自然豊かで風光明媚な地域です。
評論家の西村晃さんが、
クルマ旅で楽しむ北近畿の魅力を紹介します。

経済評論家

西村 晃さん

1956年東京生まれ。NHKアナウンサー、テレビ東京「ワールドビジネスサテライト」キャスター・解説委員を経て、経済評論家に。東京都市大学講師、千葉商科大学教授などを歴任。
学生時代から20年かけて旧国鉄全線完乗。講演などで毎年日本を数周する生活を送っている。
60歳を過ぎてから、電車からドライブ旅行に切り替え、これまでに見残した名所旧跡巡りが趣味に。歴史文化への造詣も深く、街歩きツアーなどの講師も務める。

海も山も新鮮!北近畿を巡るドライブ旅〈1日目:丹後半島〉

今回は、丹後半島を巡り兵庫県の日本海側にある城崎温泉に宿泊、「天空の城」として知られる竹田城を目指す旅である。

このルートは自然が豊かで絶景ポイントが多い。公共交通機関は若干不便なので、景色を楽しみながらの”クルマ旅“がオススメだ。

名神高速道路から、合戦で知られる地・山崎のジャンクションで京都縦貫自動車道へと入る。まずは、京丹波町の道の駅「味夢の里」でランチ。「丹波の黒豆づくし御膳」で名物の黒豆料理に舌鼓を打つ。

ここから1時間で、天橋立に到着。レンタサイクルを借りて砂嘴(さし)を横断、元伊勢籠(もといせこの)神社に参る。再び自転車でクルマまで戻り、さらに1時間走ると伊根に到着だ。

伊根は、周囲4㎞ほどの伊根湾に沿って水際ぎりぎりに「舟屋」が立ち並ぶ。舟屋とは、一階部分がクルマのガレージのようになっており、釣り船を格納できる家のことだ。映画「男はつらいよ」で紹介され、その後NHKの連続ドラマ「ええにょぼ」の舞台にもなった。伊根湾は、潮の干満差も少ない静かな湾であることから、「後ろは山で、前で鰤とる鯨とる、千両万両の金もとる」と地元の民謡でうたわれるほどの好漁場で、海に直接出入りできる舟屋が造られるようになった。どこか懐かしく、また東南アジアの海辺を思わせる舟屋群は、いまも200棟以上が残り、漁村では全国で初めて国の重要伝統的建造物群保存地区に選定された。

伊根湾は波がなく穏やかで、豊穣の海だ

まるで海に浮かんでいるかのように見える、伊根の舟屋

伊勢神宮に奉られる天照大神、豊受大神が、
この地から伊勢に移されたという故事から
「元伊勢籠神社(もといせこのじんじゃ)」と呼ばれる

伝説とリアルが、波の音をBGMに交錯する丹後半島

伊根を後にし、京都府京丹後市に入る。

「京都府」と言ったが、古都・京都のイメージとはだいぶ雰囲気が異なる。冬は雪も降るし、荒れ狂う日本海とも対峙する。しかし、だからこそ、海の幸と自然を愛でる豪快な旅が目と舌を喜ばせてくれる。

京丹後にある道の駅「てんきてんき丹後」には、ベテランガイドが常駐する。その一人中江忠宏さんは「『てんきてんき』という変わったネーミングは地元の祭に由来します、この地にまつわる7人の美女のお話や浦島伝説など、景色だけではわからない丹後路の魅力を私たちがご説明しています」と語る。

ガイドしか知らないというスポットから、海岸を見下ろすと、立岩や屏風岩といった奇岩に思わず息をのむ。京丹後から鳥取にかけての海岸線は、近年美しい地質遺産「ジオパーク」として認定を受けた。

中江さんから、この地に伝わる浦島伝説を聞く。「当地には、浦島太郎と乙姫が知り合った福島、竜宮城から帰ってきた万畳浜があります。縁城寺の記録には『825年浦島太郎、蓬莱より戻る』と書かれています」

伝説とリアルが、波の音をBGMに交錯する。さらにクルマを走らせ、今日はもう少し先の城崎温泉まで行って泊まることにしよう――。

丹後半島には奇岩が多い

歴史ある城崎温泉で外湯巡り

兵庫県豊岡市の城崎温泉は、昔から外湯巡りで知られている。

作家の志賀直哉がこの温泉地に逗留して原稿を執筆していたころ、各温泉旅館に内湯はなく、泊り客はみな温泉街に設けられた外湯と言われる公衆浴場に出かけていたそうだ。当時は内湯をつくってはならないという取り決めもあったという。

現在はそれぞれの旅館が内湯を持ってはいるが、それでも外湯巡りはこの温泉地の最大の人気ソフトになっている。

湯巡り客で賑わう城崎温泉

宿泊客の多くは、旅館名の入った浴衣と下駄、それに外湯入浴券を旅館からもらい、7か所の公衆浴場巡りに繰り出す。午後2時のチェックインから翌日午前10時のチェックアウトまでの時間帯は、この外湯入浴券を提示し、浴衣と下駄に記された旅館名で宿泊客と分かれば、無料で湯巡りができるという仕組みだ。1か所の旅館だけが栄えればいいというのではなく、町全体の振興策として利用客にアピールしている。

限られた時間内に、できれば7か所すべての外湯を制覇したいと、宿泊客は夕飯もそこそこに街へ繰り出し、夜遅くまで湯巡りに精を出す。そうして、夜の温泉街に浴衣姿が大勢闊歩するという風景が現出する。土産物店にジェラート店、そして今ではほとんど見かけなくなった射的場まで、ここでは健在だ。大旅館が宿泊客を館内だけに閉じ込めてしまえば、温泉商店街の共存共栄ははかれない。ここでは外湯巡りによる地域おこしが行われているわけだ。

私もチェックアウトギリギリまで外湯を巡り、ついに7か所すべてを楽しんだ。

城崎温泉には7つの外湯がある

下駄と浴衣でどこの宿泊客か識別できる

海も山も新鮮!北近畿を巡るドライブ旅
〈2日目:兵庫県香美町・道の駅「あまるべ」〉

午後から道の駅「あまるべ」に向かう。

山陰線余部(あまるべ)鉄橋の真下に、道の駅がある。

「空の駅」からは日本海も臨める

1912年(明治45年)に完成した余部鉄橋の旧橋梁は、高さ41mの所に架かり、威容を誇っていたが、1986年(昭和61年)に強風にあおられて貨物列車が転落するという事故があったことでも知られる。崩落の悲劇の資料は、道の駅に展示されている。

その後、2010年に新しい橋に架け替えられた。

旧橋梁を活かした「空の駅」という展望施設ができて、いまはそこが観光スポットになっている。上から見下ろす景色は圧巻で、日本海の景色も楽しめる。

余部鉄橋にて

旧橋梁を活かした「空の駅」

余部鉄橋

ここからクルマで1時間。今日は昨日の日本旅館とは打って変わり、豊岡市内のホテルを予約してある。「オーベルジュ豊岡」だ。

オーベルジュとは、宿泊もできるレストランのことである。かつて銀行の店舗だった建物を改築して、オーベルジュとして生まれ変わった。銀行の豪華な雰囲気は今も健在で実にロマンチック。白い壁に吹き抜けの高い天井から吊られたシャンデリア。そこで食するフレンチは十分に満足ゆくものだった。

かつての銀行店舗を利用したオーベルジュ豊岡

海も山も新鮮!北近畿を巡るドライブ旅
〈3日目:「天空の城」竹田城〜兵庫県三田市「パティシエ エス コヤマ」〉

最終日は、9時過ぎに出発。今日は天空の城、竹田城をめざす。

前から来たいと思ってはいたが、仕事のついでに……というわけにはいかない辺鄙なところ。そしてアクセスはクルマでないと難しいため、これまで訪れることができなかった。

雲海に浮かぶ竹田城を見るためには、暗いうちから反対側の山に登り、日の出を待つと絶景とされるが、今回はオーベルジュに宿泊したのでそれは断念した。

竹田城からは絶景が楽しめる

麓の「山城郷」に到着。

竹田城は道路が狭いこともあって、登山口へのマイカー乗り入れは禁止だ。ここの駐車場にマイカーを停め、そこから先は専用バスかタクシーに限られる。

今回はタクシーで登山口まで行き、そこから歩く。20分ほど階段まじりの山道を登り、竹田城跡に着く。

城の頂きに登ると…なるほどこれはすばらしい。雲一つない晴天、見下ろすと山あいに田畑や集落が広がり、360度のパノラマが広がっている。この爽快さ、何とも言えない格別なものがある。

映画「あなたへ」で、高倉健がここを訪ねたシーンが蘇る。ここで妻役の田中裕子の歌う姿が印象的だった。来てよかった。なかなか来るのは難しい場所だけに、喜びもひとしおだ。

山道を下る。往路はタクシーだったが、狭い山道ゆえ一方通行だ。「山城郷」まで紅葉を愛でながら30分ほどの散策を楽しんだ。

下界と隔絶した竹田城

竹田城にて

テレビなどでたびたび紹介される有名店は
新興住宅街のなかに

午後、クルマに乗り込み出発。

いままで何度か試みたが、行けなかった所をたどる旅。今回の旅程にどうしても入れたかった場所が、最後の訪問地となった。兵庫県三田市にある「パティシエ エス コヤマ」である。

テレビなどでもたびたび紹介され、百貨店の「サロン・デュ・ショコラ」といった菓子のイベントなどへの出品でも知られる有名店は、意外にも新興住宅街のなかにあった。

カーナビに従い店に近づくと、警備員が駐車場の整理に当たっていた。何か所かに分散されている駐車場はどこも満杯で、しばらく待たされる。平日の午後に想像以上の混雑だ。建屋がいくつかあることから、繁盛するにつれて建て増しした、と想像できる。

ケーキの館、パンの館、あるいはチョコレートの館に喫茶と、一つひとつはそれほど大きな建物ではないが、それぞれに行列ができていた。ほどんどの人がわざわざ遠くからやってきていることは、駐車場に停まるクルマのナンバープレートからも見て取れた。ここまで来たのだから買って帰らなければと思い、メインのケーキを売る店の行列の最後尾に着く。

並ぶこと1時間あまり。ようやく店内に入り、生ケーキにプリン、焼き菓子などを購入することができた。

さっそく帰りの高速道路のサービスエリアで生ケーキを食べてみた。旨い!甘みを抑えながらも濃厚な味わいとしっとり感に満足した。全体に価格も良心的、これならばあの行列にも納得だ。

クルマでなければたどれなかったであろう今回のコース。関西発なら手軽なドライブコースとしてお薦めできる。横浜まで帰る私は、中国自動車道、名神、東名と走り抜けて、休憩を含め帰路7時間くらいだったが、満足ゆく旅に疲れはあまり感じなかった。

パティシエ エス コヤマ

ケーキやパンなど
いくつかの館に分かれている

平日でも店内に入るのに
1時間以上かかった

西村さんが旅の途中で出会った
ステキなお店をご紹介します。

1京都縦貫道路の道の駅「味夢の里」での
「丹波の黒豆づくし御膳」
(京都府京丹波町)

2テレビなどでたびたび紹介される有名店
「パティシエ エス コヤマ」
(兵庫県三田市)

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