「学び」が身につく家庭環境を考える

森山 真有 株式会社トライグループ専務取締役

PROFILE 森山 真有 株式会社トライグループ専務取締役

1995年に京都大学経済学部を卒業後、株式会社トライグループに入社。2001年にトライグループ取締役、2006年に株式会社TRGネットワーク代表取締役社長に就任。これまでに1000人以上もの子どもと家庭に向き合い、専務となった現在も生徒を担当し、学習指導を行っている。「伸びる子の法則」、「トライ式伸びる子の勉強法」などの著作の他、子育てや学習に関する講演などでも活躍中。

マンションにおける子育て環境のあり方について、家庭教師派遣のリーディングカンパニーとしてTVCMなどでもおなじみの「家庭教師のトライ」専務森山真有氏にお話を伺いました。

子育て環境と「考える力」

近年、私たち親世代が子ども時代を過ごした頃とは、世の中の構造が大きく変わっています。中でも顕著なのが家庭内の環境です。

特に子どもの成長にとってマイナスに影響するのは、お父さんとの接触時間が短いこと。そしていわゆる核家族ゆえに、お祖父さんやお祖母さんといった幅広い世代との日常的な交流機会が少ないことなどが挙げられます。

かつて子どもは、さまざまな世代の人とふれあうことで多彩な人生観に接し、また知らず知らずのうちに一人の人間としての基礎力や、礼儀、常識といった判断基準を身につけて育ちました。

ところが以前に比べると今は、こうした自分自身の判断基準を持たないままに育ってしまう子どもが増えている傾向にあります。子どもをめぐるさまざまな事件が報道されています。一概には言えませんが、子ども自身に考える力や判断力が身についていないことも要因のひとつになっているのではないかと感じます。情報と知識は持っているけれど、その意味や価値といった本質が身についていないために、自ら判断することができないわけです。

では一体「考える力」とは何なのでしょう?

私なりに答えるとすれば、それは「インプットされた情報を整理し、アウトプットできる力」ということになります。

最近の子どもは社会の変化もあって、大量の情報を得る能力は長けています。しかし、それを脳内で自らの基準のもとに整理し、他人に向けてアウトプットすることが不得手になっている。家庭教師として多くの子どもやご家庭を見てきた経験から、私はそんな風に感じています。

このアウトプットとはすなわち言葉や態度によるコミュニケーションを指すのですが、その方法が分からなかったり、対応可能な領域がごく狭いのは、先にふれたように子どもたちの普段の生活の中での経験値が絶対的に少ないからだと思うのです。

コミュニケートしたいのに、そのやり方が分からない。それが子どもたちの苛立ちの底流になっているのではないでしょうか。

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学ぶ目的と意味を知ることが、地力を育てる

子どものみならず一般的に言えることですが、何かを身につける時には「何のために学ぶのか」という目標を持っているかどうかが大きなポイントになります。

例えば書店に行くと、ビジネススキルを上げたい方の心をくすぐるような魅力的なタイトルのビジネス書がズラリと並んでいます。多くの方がこれらを読んで勉強されていますが、こうした本は、膨大で奥深いビジネスの世界のごくごく一部を取り上げ、興味を惹くように書かれたものがほとんどです。ですからそこに書かれた文言だけを盲信すると、大量の本は読んだものの、断片的な情報だけが頭に残り、結局は身につかないということになりがちです。一生懸命勉強している事実に満足してしまい、本来のスキルアップという目的にたどり着かない…。つまり手段がいつのまにか目的化してしまうわけです。

子どもの場合、勉強のための勉強になってしまうと、子どもたちは学ぶ興味を維持することができません。仮にうまく難関学校に合格したとしても、そこがゴール。その先には何もありません。

歴史の勉強を例にしてみましょう。年表の数字を丸覚えするのはきっと多くの方が苦手だったと思うのですが、実は歴史というものは各時代の人々の想いが交錯したドラマなんだという気付きを得ると、味気ない年表がふいにドラマのストーリーのように見えてきます。

情報を詰め込む学習一辺倒ではなく、学ぶ目的をしっかりと持ち、自分の中にある数多くの引き出しを参照しながら物事を楽しく理解する。それが効果的な学びだと思います。

「将来、誰かの役に立つため」など、親御さんはぜひお子さまに学ぶ目的意識をしっかりと持たせてあげてほしいと思います。

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子どもというものをよく知り、自分の子をよく見ること

子どもというものをよく知り、自分の子をよく見ること

子どもの学習環境を考える上では、まず保護者の方が「子ども」とは何か、大人とはどう違うかを理解することが大切です。

指示したことができないとついつい子どもを怒ってしまう。そんな親御さんはまず、子どもは年齢が低いほど頭脳がゆっくり回っているのだということを理解してください。つまり大人が言ったことを理解し行動するのに、子どもは大人よりも時間がかかるのです。

大人と子どもが駆けっこをすることを想像すると分かりやすいかもしれません。小さな子は決して大人と同じ速度では走れません。しかし大きくなるごとにその差はなくなり、やがて大人と同じ速度で走るようになります。

脳の発達もこれと同じで、子どもの年齢ごとに発達の段階があり、年々受容できることが増えていくわけです。まずこのことを知らないと、ついつい大人の都合を子どもに押しつけてしまうことになるのです。

また一般論とは別に、それぞれの子どもによるタイプの違いというものもあります。今度はご自身のお子さんがどんなタイプなのかをしっかりと観察することが重要になってくるのです。

先の駆けっこの例でいうと、競走することに夢中になる子もいれば、競走自体が嫌いな子もいます。子どものタイプは実にさまざまなのです。

しかしこうした多彩な子どもたちにも、共通する意欲向上のサイクルがあります。

それは「面白い(興味)」・「できる(目標)」・「できた(達成感・自信)」というプロセスを経験させてあげることです。大人には少しまだるっこしく感じるかもしれませんが、それぞれのお子さんに合ったやり方でこのサイクルを体感させてあげれば、学習効果は飛躍的に高まります。

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