マンションで気持ちよく暮らすための
ちょっとのコツ

マンションにはいろんな人が住んでいます。
そこにはさまざまな生活スタイルがあり、
また、住んでいる人の価値観もそれぞれ違うでしょう。
特集ではマンションで気持ちよく暮らすためのちょっとのコツをご紹介。

年齢も生活背景もさまざまな人たちが”ひとつ屋根の下“で暮らすマンションは、
いざというときに、誰かが近くにいるという安心感がありますよね。
しかし、最近ではお隣さんの顔も分からない状態も珍しくないばかりか、
トラブルを抱えているというお悩みも耳にします。
そこで、今回はマンション側で定められたルールを紹介しつつ、
永く、安心して暮らすためのちょっとのコツをご紹介いたします。

マンションのルールを守って
安全で快適に暮らしましょう

マンションに暮らす人が、安全で快適に、そしてトラブルなく暮らすために定められているルールはご存知でしょうか? それは「マンション管理規約」や「マンション使用細則」と呼ばれているものです。この規約や細則、ルールというと堅苦しく感じるかもしれませんが、共同生活を送る上での決まりごとですので、守ることが前提です。

一般的に「マンション管理規約」では、マンション全体の管理や防災、ペット飼育の可否についてのルールが定められています。最近注目度が高い民泊も、規約で可否が定められることが増えてきました。

一方で「マンション使用細則」には、廊下や自転車置き場といった共用部分の使い方など共同生活に関するルールが定められています。バルコニーでの喫煙の可否、布団や洗濯物の干し方について細則で決められているマンションもあります。具体的には、「バルコニーの手すり、または窓枠などに寝具、敷物、洗濯物などを干すこと」はしてはならない行為と表記があることも。リスク回避やマンションの美観を目的とした、一般的なルールとなってきました。

これらのルールは、必ず守らなくてはならないものです。それに加えて、マンションでお互いが気持ちよく過ごすためには”マナー“も大切なポイントだと言えます。

ちょっとのコミュニケーションで
許し合う心が生まれる

住人同士が快適に暮らすためには、個人に委ねられたマナーも大切にしたいものです。東急コミュニティーがマンションにお住まいの方を対象に行ったアンケートでは、音、匂い、共用部の使い方、そして子どもに関することなどが、マンション生活で気になることとして挙がりました。

多くの問題は「このくらいだったら大丈夫かな?」という許容範囲のギャップが根底にあります。自分は迷惑をかけているつもりがなくても、実は我慢している人がいる、という可能性があるのです。その我慢が日に日に増してしまい、大きな不快感につながってしまうようです。

マナーとは、突き詰めれば「相手が不快に思うことはやめましょう」ということです。しかし、難しいのは人によって何を不快に感じるかが違うということ。だからこそ、日頃から少しでも良いのでコミュニケーションをとっておくことが大切だと思います。

例えば、「子どもたちがご迷惑をおかけしてませんか?」「何かあったらいつでも言ってください」と声をかけてみる。それだけで、お互いにお願いや気になっていることを言いやすい関係を作ることができます。世間話をしながら、自分や家族の置かれた状況を説明してみる。そうすると、「あぁ、そういう事情だから仕方がないんだな」と、互いを思い合えるようになるものです。そうしたちょっとのコミュニケーションで、お互いを知り合うことが、何か迷惑をかけてしまっても許し合えることにつながっていくのです。

お互いを知り、許容範囲のギャップを許し合うことが、マンションで気持ちよく暮らすコツだと言えるのではないでしょうか。

廣田 信子さん

マンション総合コンサルティング株式会社
代表取締役

廣田 信子さん

一級建築士、マンション管理士、マンションコミュニティ研究会代表。マンション管理やマンションでのコミュニケーションの専門家として全国で年間約50回の講演を行う。著書『2020年マンション大崩壊から逃れる50の方法!』(宝島社)。

気持ちがいい!

コミュニケーション方法

マンションでお互いが気持ちよく暮らすためには、コミュニケーションがポイントです。
ちょっとした勇気と工夫で、快適なマンションライフを送りませんか?

  • まずは笑顔で
    明るくごあいさつ

    「こんにちは!」の明るい笑顔は、自然と相手も笑顔にする魔法のようなもの。あいさつは「私はいつでもあなたと向き合う姿勢でいますよ」というサインを送る手段です。ご近所付き合いをスムーズにする基本として、家族全員で笑顔のあいさつを心がけていきましょう。明るいあいさつを不快に感じる方はいないはずです。

  • お願いするときは
    「I(アイ)メッセージ」で

    居住者に改善してほしいことがあるときは「Iメッセージ」で伝えてみてはいかがでしょうか。Iメッセージとは、主語を「I(私)」にしたお願いの仕方です。「あなたが悪い」ではなく、「私が困っているから助けてほしい」というニュアンスで伝えると相手に不快な思いをさせにくく、自分の要求も伝わりやすくなります。

  • 年賀状やカードを
    送ってみよう

    一年に一度、両隣や上下階に住む人に年賀状を書いてみませんか? 直接あいさつするタイミングがない場合や日ごろからお世話になっている場合、年賀状を送ることで心の距離が縮まります。またカードを介したコミュニケーションも有効です。顔は見えなくても接点を持つことで、自然と助け合いの精神が育まれていきます。

  • 世間話をして
    お互いのことを知ろう

    あいさつと一緒に何気ない会話をしてみてはいかが。特にマンション内で他の居住者と一対一になる機会が多いのはエレベーターの中です。ちょっとだけ勇気を出して天気の話や街の話などの世間話をしてみてはいかがでしょうか。相手だってあなたと話すきっかけを探しているかもしれませんよ。

震災時、カードがキッカケで生まれた“助け合い”

上記では「気持ちがいい! コミュニケーション方法」の一つとして、カードでのコミュニケーションをオススメしてくださいました。
ただ……やってみたいけれどちょっと勇気がいるな、なんだか恥ずかしいな、迷惑がられないかな?
と感じる方もいらっしゃるでしょう。でも、ちょっと勇気を出してコミュニケーションをとっておくことが、
いざというときに大きな力になる……そんな場合もあります。
カードでのコミュニケーションを推奨する廣田先生ご自身も、カードで挨拶を行っていたことにより
“いざ”というときに助け合えた……そんな経験があるそうです。

お隣の親子を助けたい!

私が代表を務める「マンションコミュニティ研究会」では、マンション住民の方やマンション管理人の方に、カードによるコミュニケーションをオススメしています。特に出しやすいのは年賀状です。普段はすれ違いに挨拶をするくらい……そんなお隣さんや上下階の方に、年賀状で新年のご挨拶や近況の報告をすることで、よりお互いを知り合うキッカケを作ってみませんか? というものです。

私自身、年賀状を出したお陰で助け合うことができた……という経験があります。

ある日、隣に小さな2人の子ども(1歳、3歳くらい)の子どものいる家族が引っ越してきました。私自身子育てをしてきた経験もあり、育児が大変なことは身をもって実感しています。また、自分の子どもは手を離れており、比較的時間にも余裕がありました。おせっかいと思われないように、何かあったら手助けしたいという気持ちを伝えるために、その年のお正月に「何かあったらいつでも言って下さいね、お子さんが隣にいてくれて元気をもらっています」という年賀状をポストにお送りしていました。
奥さんから「心強いです、何かあったらよろしくお願いします」という返信が届きました。

そして、3月。東日本大震災が発生したのです。
私が住んでいたのは関東ですが、街全体で大きな被害がありました。液状化によりデコボコになった道路は通行できず、ライフラインも一時的にストップ。これからどうやって生活していけばいいのか……そんなとき、頭に浮かんだのは、お隣の親子のことでした。
大丈夫だろうか。まずお隣に飛んでいきました。躊躇なく動けたのは、年賀状の交換があったからです。

「水がなくて困ってるんです。お店にもなくて……」

水ならいくらでもあるわよというと、奥さんの目には涙が。小さな子どもを抱えてどれだけ心細かったか。
ちょうどご主人が海外出張中。子どもたちを連れて、泥だらけになりながらスーパーに行っても棚が空で、どうしようと思っていたところだったのです。

すぐさま我が家にストックしてあったお水を渡しました。その後も、水の運搬等、我が家でできることは、手伝いました。

スムーズに助けられたのは、1枚の年賀状を交換していたからです。
助けられてよかったと、私も胸が熱くなりました。

親しくもないのに突然カードを贈っては迷惑なのでは……そんなふうに感じる方もいらっしゃるようですが、そんなことはありません。マンションコミュニティ研究会には、実際にカードでコミュニケーションをとってみた、という方から感想をいただきますが、皆さん「とても喜ばれた」「カードをきかっけに仲良くなれた」とおっしゃっています。

いざというときに隣人同士が、マンション全体が助け合える……みんなが安心して暮らせるマンションコミュニティが形成されるといいですよね。