特集Ⅱ

マンションこそ気を付けたい!
熱中症

熱中症と言えば、日差しの照りつける屋外での発症をイメージしがちですが、
意外にも室内、しかもマンションだからこそ高まる熱中症の危険があります。

今回は、マンションだからこそ高まる熱中症の危険性や対策について、
快適で健康的な居住空間を研究する慶應義塾大学教授、伊香賀俊治さんに伺いました。

注意すべきは就寝中の熱中症

熱中症と言うと、暑い屋外で水分を摂らずに倒れてしまう……というイメージを持っている方が多いのではないでしょうか。しかし、救急搬送された患者のうち約半数が住宅内で発症していたというデータもあり、気を付ける必要があるのは屋外だけではありません。また、熱中症は真夏に多く発症しますが、実は梅雨明けの時期にも多くの人が救急搬送されています。季節の変わり目で体が天候に順応できていないことや、蒸し暑さなどの理由によって起きるのです。よって、いまの時期から家ですべき熱中症対策を知っておくことが大切です。

そもそも、なぜ熱中症になるのでしょうか?人は体温が上がると発汗し、その汗が蒸発することで体温を下げます。しかし湿度が高いと汗が蒸発しにくかったり、体内の水分が不足すると汗を出さなくなります。すると体温が上昇し続け、熱中症になるのです。

特にマンションにお住まいの方に気をつけていただきたいのが、就寝中の熱中症です。木造の戸建住宅に比べて、鉄筋コンクリートの集合住宅では、夜間になっても室温が下がりにくいのです(図1)。コンクリートは温まると熱をため込み、じわじわと放出していく性質があります。そのため外気温が下がっても室温は下がらず、夜間を通して暑い状態が続きます。マンション住まいの方々は、そうした環境下で就寝するため、夜間に熱中症になるリスクが高いのです。

冷房は”弱くつけ続ける“がベスト

では、どのように予防対策をしたらよいのでしょうか?

ポイントは3つあります。

● ポイント① 温湿度計で部屋の状態を把握する

まずは、室内の温度と湿度を管理するため温湿度計の設置をオススメします。目安は室温28度・湿度70%、この数値以下を目指してください。湿度が高いと汗が蒸発しにくくなるので、温度だけでなく湿度管理も大切です。

● ポイント② 日差しを入れない

室温を上昇させないためには、そもそも日差しを入れないことが大切です。よしずやすだれ、ヘチマなどでつくる緑のカーテンをベランダに設置することが効果的です。ベランダ床全面に日が当たらないように設置できると、表面温度が上がりにくくなり効果的です。ただ、ベランダは共用部のため、マンションのルールによって設置できない場合が多いので、その場合は、室内対策としてカーテンを遮熱・遮光にする、断熱効果のあるペアガラスや内窓を設置するなどの工夫がよいでしょう。

● ポイント③ 冷房を適切に使用する

住宅内熱中症患者の約90%が冷房を使用していませんでした(図2)。マンションは夜間、室温が下がりにくい構造ですから、冷房は28度設定を目安に寝ている間もつけ続けてください。タイマーで稼働時間を設定した場合、冷房が切れると、熱を帯びている壁・床・家具からの放熱によって室温はすぐに上がってしまいます。就寝中は水分補給が遅れることもあり、熱中症につながる可能性が高まります。

昼夜、冷房を使うことに経済的な負担を感じるかもしれませんが、熱中症の予防に室温・湿度の調整は欠かせません。直接風が当たるのが気になる、という人は、風の向きを変えるなど、気持ちよく過ごせるように工夫してみましょう。

伊香賀 俊治さん

慶應義塾大学 理工学部システムデザイン工学科
教授

伊香賀 俊治さん

早稲田大学大学院修了。㈱日建設計、東京大学助教授を経て2006年より現職。専門分野は建築環境工学。内閣官房、国土交通省、文部科学省、経済産業省、環境省、厚生労働省などの建築関連政策に関する委員を務める。