特集Ⅰ

家族で考える
実家の片づけ

人生100年時代の今、
誰にとっても他人事ではないのが「実家の片づけ」です。
特集では、実家を片づける際に大切なポイントをご紹介します。

定年後、20~30年の人生が残っている今、
深刻化している問題の一つが、「実家の片づけ」です。
物を捨てることができず、ついため込んでしまうという傾向がみられます。
実家が物であふれかえってしまう前に、家族で向き合ってみませんか?

実家の片づけは、家族で取り組もう

とうの昔に巣立っていった子どもの部屋に残された荷物、10年以上使っていない来客用の布団、食器棚に収まりきらない大量のお皿やカップ類・・・・・・。いつのまにか物が増えてしまった実家を「片づけよう」と思いつつ、キッカケがなくそのままにしている人は多いのではないでしょうか。

片づけたほうがよいことは分かっていても、大量の荷物を高齢の親御さんだけで片づけることは困難です。粗大ゴミ一つ出すにしても、ゴミ処理券の購入、役所へのゴミ回収の予約、玄関前までの搬出と、手続きが面倒だったり、体力的に無理があったり。とはいえ、ハウスクリーニングや片づけアドバイザーなど、プロによるサービスが充実してはいますが外部の人に頼むことには抵抗を感じることもあるでしょう。

そうなると、頼りになるのは家族、主に子どもたちです。高齢者にとって、片づいていない家には危険がいっぱい。安心・安全な住まいで健康的に過ごせるよう、家族で力を合わせて片づけに取り組むことが大切です。

片づけをスムーズに進めるコツの一つは、大きなものから取りかかること。布団や座布団など、かさばるものをまず処分すると、作業スペースが確保できるうえに、視覚的にも「片づいてきている」という実感を得られ、やる気が高まります。大きなものを片づけて気持ちを楽にしてから、衣類や食器など、「要る・要らない」を確認しながら片づけを進めていきましょう。

「遺品整理」よりも「生前整理」を

実家の片づけは、「生前整理」と「遺品整理」の二つに分けられます。

生前整理は、荷物の持ち主である親御さんが元気なうちに整理をすること。遺品整理は、親御さんが亡くなった後に、残された家族が荷物を整理することです。

遺品整理は大変な作業です。親が亡くなった悲しみの中、大切なものと不要なものが混在する大量の荷物を、持ち主不在で整理しなければならないのですから。しかし、親御さんが元気な間に家族で片づけをすれば、持ち主の意思を尊重して整理をすることができます。また、費用も遺品整理の3分の1で済むことがほとんどです。親御さんに介護が必要になった頃、あわてて片づけをするご家族もいらっしゃいますが、心身の弱った状態で荷物の要・不要を判別することは難しく、非常に時間がかかります。動けるうちに生前整理をしておくことは、家族みんなにとってよいことなのです。

すっきりと片づいた家で過ごすのは、思った以上に快適です。最初は乗り気でなかった方も、みなさん「片づけをして本当によかった」とおっしゃいます。

子どもの側から生前整理を呼びかける場合は、「もう年なんだから」「介護に備えて」などと言うと、まだまだ元気な親御さんは聞き入れてくれないかもしれません。「災害が増えているから、停電してもトイレに行けるように、廊下の荷物を片づけに行くよ」など、防災をきっかけに話を切り出すとスムーズです。

荷物の多い家は危険がいっぱい!
片づけて、家の中を安心・安全に。

東京消防庁のデータによると、救急搬送された高齢者の8割以上が「ころぶ」事故によるもので、その「ころぶ」事故のうち約6割が住宅等の居住場所で発生しています。安全なはずの家の中で、転倒により救急搬送される方が多いというのは不安な状態ですよね。

たとえば、カーペットの縁などちょっとした段差でも、高齢者にとっては事故のもとです。荷物が多く、生活の動線を遮られてしまうような状態はもってのほか。家庭内の事故を防ぐという点からも、実家の片づけは非常に重要です。

東京消防庁「救急搬送データから見る高齢者の事故」より抜粋、一部修正
http://www.tfd.metro.tokyo.jp/lfe/topics/201509/kkhansoudeta.html

渡部 亜矢さん

実家片づけアドバイザー

渡部 亜矢さん

一般社団法人実家片づけ整理協会代表理事。少子高齢化社会に特化した「実家片づけアドバイザー」認定講座、人生100年ライフの片づけ整理術、親子で取り組む生前整理、終活ワークショップ、遺品整理、物とお金の整理術、出張片づけサービスなどを展開中。著書に『カツオが磯野家を片づける日~後悔しない「親の家」片づけ入門~』(SBクリエイティブ)がある。

実家の片づけがうまくいく!

7カ条

家族だからこそ、なかなかうまく進まないこともあるのが実家の片づけ。
それぞれの価値観が交差し、要る・要らないを決めるにも一苦労。
ここでは、スムーズに片づけを進めるための「実家の片づけ7カ条」をご紹介します。
実際に片づけをする際の参考にしてください。

  • 1

    ゴールは「親が安心・安全・健康に暮らせる家」

    ただ荷物を減らすことがゴールではありません。親御さんが安心・安全・健康に過ごせるように、防災や防犯の視点を持って片づけを進めましょう。たとえば廊下に荷物が置いてあると、地震の際に崩れて、トイレのドアが開かなくなり閉じ込められてしまうことも。さまざまな危険を想定して片づけましょう。

  • 2

    片づけの主人公は「親」

    片づける際、実際に体を動かすのは子どもだとしても、主役はあくまでそこに住む親御さんです。物を捨てるか残すかの判断は、親御さんがします。少ない荷物ですっきり暮らすことを好む若い世代とは、意見が食い違うこともあるでしょう。子世代は、「危なくなければヨシ」というくらいの気持ちで取り組んでください。

  • 3

    「捨てる」に捉われない

    片づけというのは、無理に捨てることではありません。見てすぐ「要らない」と判断できるものは捨ててOKですが、もし、残すか捨てるか3秒以上迷ったら「一時保管場所」として段ボールに入れておくとよいでしょう。必ずしも捨てなくても、片づけは進みます。

  • 4

    片づけの「PDCA」を回す

    一度で片づけが終わることは、まずありません。しばらくすると少し荷物が増えて、また片づけての繰り返し。PDCA(Plan:計画、Do:実行、Check:評価、Act:修正)を意識して、片づけのサイクルを回していきましょう。繰り返すうちに、片づけスキルは必ず上がります。焦らずに取り組んでいくことが大切です。

  • 5

    収納方法は正論より習慣

    理論的に正しい家事動線というものはありますが、長年親しんできた動線に従って体は動いてしまうもの。合理的な収納や家具の配置にしようとしても、慣れない環境は住む人に負担をかけてしまいます。危険のない範囲であれば、多少効率が悪くても動きやすいそれまでのやり方を続けて問題ありません。

  • 6

    価値共有型のアプローチ

    親世代は、自分の願望よりも周囲との調和を大切にする傾向があります。その価値観を子世代も共有することが、実家の片づけの成功の鍵。「片づいた家は気持ちいい」だけでなく、「お客さんに安心して上がってもらえるよ」とか「孫がハイハイできるように」など、周囲にも喜びが広がるような状況を目指して片づけに取り組むとよいでしょう。

  • 7

    片づけられないものは「命を守るのに必要か」で考える

    どうしても片づけられないものについては、「命を守るのに必要かどうか」を考えてみましょう。目安となるのは、災害時に避難所でもらえるものかどうかです。避難所でもらえないもの、たとえば処方薬、メガネ、補聴器など。こういったもの以外は、捨てても構わないものや、いつでも買うことができるものであるケースがほとんどです。

親だけじゃない!“子どもの荷物”も片づけよう

実家の子ども部屋に、自分の荷物は残っていませんか?

スキー道具や洋服、アルバムなど、実家が子どもの荷物の一時保管場所として使われているケースが多くみられます。なかには、子ども自身が実家に何を預けているのかを忘れていることも。

実家はクローゼットでも物置きでもありません。不要なものは処分しましょう。卒業アルバムなど、捨てられない思い出のものは、自分で引き取ります。どうしてもそれが無理なら、実家の中にきちんと整理して置かせてもらいましょう。